2021.12.21 Tue Q&A回答のページ

Q53

32歳、女性。28歳で第1子を出産し、その時の産後7-8ヶ月の頃にリウマチを発症しました。メトトレキサート(MTX)とエタネルセプトで治療中ですが、出来れば二人目の子供を欲しいと思っていますが、可能でしょうか?どのようなことに注意するべきでしょうか?

A

まずは、関節リウマチをお持ちの方が妊娠した場合の影響についてですが、早産、帝王切開、妊娠高血圧症、低出生体重児の発生頻度がリウマチを有していない場合に比べて1.5~1.9倍と高いとの報告があります。また、リウマチの活動性が高い状態で妊娠を継続すると低出生体重児のリスクが増えるという報告もあります。従来は妊娠中はステロイド剤で乗り切ればよいとされていましたが、ステロイド剤の使用により低出生体重児が増える(妊娠期間が短縮する)ことを踏まえ、現在ではまずはリウマチ自体が寛解にあること、そして妊娠にベストな薬剤に変更しつつ寛解を維持しながら妊娠に挑戦することが望ましいとされています。そして妊娠判明後は治療薬なしで経過をみていき、出産後には授乳中に適切な治療薬で対応するというのが理想的な流れになります。

MTXはその催奇形性により内服中は妊娠を避けなければならず、少なくともMTXの中止後1月経周期は開けなければなりません。アザルフィジン、タクロリムス、ブシラミン、TNF阻害薬およびTNF阻害薬以外の生物学的製剤で寛解が維持できていてはじてめ妊娠に挑戦することになります。ちなみに生物学的製剤のうち、アダリムマブとエタネルセプトにおいて催奇形性はみとめられておらず、またセルトリズマブ・ペゴルは催奇形性が認められていない上、胎盤を通して胎児に移行しないことがわかっています。

万全の体制で妊娠が成立したものの、その後リウマチが再燃してしまった場合についてですが、まずはステロイド剤の内服または関節内注射、そして安全性の高い生物学的製剤を導入します。アザルフィジンやタクロリムスの投与もあり得る選択肢ですが、改善するまでに時間がかかります。

妊娠中の非ステロイド系抗炎症薬の使用についてですが、妊娠後期(28週以降)にケトプロフェン入りの内服薬のみならず外用剤(坐剤、パップ剤、テープ剤、軟膏など)を使用すると先天性心奇形のリスクが高くなるために禁忌とされていますが、それ以外では催奇形性は否定的です。妊娠後期の鎮痛、解熱に対してはアセトアミノフェンを使用します。

また、妊娠12週までにステロイド剤を使用した場合、口蓋裂のリスクが数倍に上がるとの報告がありますが、一般的に500人に1人の発生頻度とされていますので、これが3人に増えたとしても、残りの497人は生じないということになります。ちなみにステロイド剤の胎盤通過性はプレドニゾロンが10%と最も低く、これを使用するのが妥当と考えられます。

(回答:大本晃裕先生)