2021.11.26 Fri Q&A回答のページ

Q1

むくみと腫れの違いについて教えてください。

A

むくみと腫れの区別は見た目では難しい場合が少なくありません。まずむくみと腫れについてそれぞれ医学的に説明してみます。

まずむくみについてですが、これは血液の流れやリンパ液の流れが滞るために血管やリンパ管から水分が間質(血管やリンパ管の外の部分)に浸み出していった状態のことを指します。原因は様々で、最も多いのが運動不足、加齢、立仕事、座っている時間が長い、水分や塩分の摂り過ぎでもむくみます。さらに心不全、腎不全、低アルブミン血症(栄養状態が良くないこと)など多くの原因があります。これらのむくみは指で押すとしばらくの間皮膚が引っ込みます(圧痕)。一方甲状腺機能低下症という病気でみられるむくみの場合はこの圧痕はみられないのが特徴です。

一方の腫れはというと、局所に炎症が起こると血管の透過性(血管の壁を通して水分が間質に出ていくこと)が亢進するために間質に水分がたまってくる状態です。ボクサーが顔を殴られたあとにひどく腫れている状態がまさに良い例です。

リウマチの患者さんの関節の腫れについてですが、関節を包んでいる滑膜が主たる炎症の場所であり、炎症がおこった滑膜では新たに血管(新生血管)がつくられ、炎症に関与する細胞が集まってき、それらの細胞から放出されるサイトカインという物質の影響でさらに滑膜が増殖(厚くなる)していきます。そこでは単に水分が間質にたまるという現象では説明がつかず、滑膜が増殖することにより厚くなり、結果的にその部分の関節自体が腫れているという状態を呈します。関節液も炎症によって量が増えることがあり、これも関節が腫れる原因のひとつです。リウマチの患者さんの場合、足首の関節が炎症により腫れているとそれに伴ってそれよりも末梢が浮腫んでいることがあり、ただ単に浮腫んでいるだけなのか、足首の関節炎もあるのかが判別しづらい場合があります。この場合、エコー検査を用いて新生血管の程度や滑膜の厚さなどを観察して鑑別しますが、両者がともにみられることが少なくありません。

その他に有名な浮腫としてリンパ浮腫があります。これはがんの手術によりリンパ節を切除したり放射線の照射によりリンパ液の流れが滞り腕や脚が腫れてくるものです。

日頃の診療で良く遭遇する高齢の方の浮腫みの多くは運動不足や下肢の筋力低下、座ってばかりいることにより血液、リンパ液の流れが滞ること、さらには前述した全身性の要因が加味されたためにいくつかの要因が重なっておこることもあり、高齢者浮腫と言う言葉もあるくらいです。

(回答:大本晃裕先生)